数日前に来たその男の笑顔はすごく素敵で
きっと誰もが魅了されるだろう。信頼するだろう、一目で。
英語もきちんと話していて、身なりもぴしっとしていて隙がないのだ。
そして必要なことを私に聞き、
レセプションに勝手に座っていた私に「部屋は空いてますか?」だなんて
冗談を言ってここのみんなと笑っている。

そのあと、

彼が経営していたレストランがつぶれたことを知った。
私も一度行ったことがあり、味に定評があるレストランだった。
彼の両親は2人とも自殺でほぼ同時に亡くなり、
彼がずっと付き合っていた彼女も去り、
自分が全力を注いでたレストランも潰れ、
携帯を売り払うほどにお金もなくなったという。

周りのみんなは全力で彼を支えようと
とりあず彼の実家に送りこんでいた。



昨日の夜、3時間立て続けに素晴らしい会話をした
イギリス人の素敵な夫婦は、
私の聴いていたSherbetsのベンジーの音楽を気に入ってたので
私はCDをプレゼントした。
彼らは弱って動けない私にパンを買ってきてくれた。おいしいパンを。

妻の方とはとっても気が合って、気丈で素敵で美人で・・・
薬剤師さんでアーユルヴェーダを1年やってみたが、
まったく実用的でないことを知り辞めたという話で、
色んな話をした。

大学の話をすれば、「そんなの大学じゃないよ・・・」(夫は大学で教えている)
妻は「でも、医者になれるなら、患者に責任とれるからいいカリキュラムね。
環境は劣悪だけど・・・。そしてシッダは本当に面白そうだわ!私やりたいわ!
・・・でも無理ね・・・その環境じゃ生きるなんて思えないわ・・・」

隣の家族が経営してる店屋が、
月いくら家賃を払わなければいけず、
妊娠していて、病院のお金も、食費も払わなければならない上に
高い値段では物を売りたがらないのにツーリストが信用してくれなくて
経営がうまくいっていないという話をしたら、
夫の方が一晩考えて、「こんなことを書いてみたらどうかな」
と「FAIR TRADE」と看板を掲げる提案を私にしてくれた。


一緒に朝食をとり、
ハエがうざったいね、と言いながら、
「今日の11時50分にウーティに行くんだ」と話していた。
私も見送るつもりだった。



10時。


デリーに居るその夫婦の親戚が、
心臓発作を起こした。

彼らは、「とにかくデリーへ行かないと」とホテルから去って行った。


旦那さんが書き残してくれた「FAIR TRADE」 の提案の紙は
わたしのポケットの中。


いま、わたしが、この素敵な夫婦にできることは、


無事彼らがデリーに辿りつくよう祈ることと、




・・・この紙を、あの家族に渡さなきゃ。



こうやってみんなの命は引き継がれていっていて
わたしはその架け橋に過ぎないと痛感する



からだが、弱くても、
そして 何が起きようとも、

わたしたちは、生きている、のか。